写真はこちら薬草写真集 【か】かんぞう・甘草 無料画像です いいね!お願いします。
植物名・薬物名・科名:
カンゾウ(マメ科)・甘草・甜草
Glycyrrhiza uralensis Fisch
日本ではウラルカンゾウと呼ばれる
寄贈者名・産地・年月日・経歴:
王氏・2003・中国より種子を持ち帰る
薬用部位・効能・開花・採集時期:
収穫は秋、根を掘る。
効能は急な痛みの緩和、トゲ抜き、咽喉痛、痰、咳、声枯れにうがい
繁殖法:
秋にルート(根茎または走出茎)を切って植え付ける。
春に種蒔き、乾燥地を好む。
カンゾウは、ほかの植物たちより遅れて芽を出すので、無造作に草引きをすると、出かかった新芽をポツンと折ったりして悔やむことになります。除草は五月に入ってからが無難です。六月、草丈は一メートルに伸び、葉液に淡紅色の小さい花を穂状に着けます。
甘草はエジプトのツタンカーメン王の墓地から甘草束が発掘されています。『ギリシャ本草』に「喉のヒリヒリするのに良い、あらゆる植物に和し胃、肺、肝、膀胱、腎のために使われる」と。また中国の『神農本草経』上品に「五臓六腑寒熱邪気を治し、筋骨を堅し、肌肉を長じ、力を倍す」。名医別録に「中を温め気を下し煩滿、短気、咳嗽、乾きを止め、経脈を通じ血気を利し、百薬の毒を解し七十二の石、千二百種の草を和す」とあります。
(橋本竹二郎著『主治医』)
種子をまいて、最初に地下に向かって伸びた根が甘い。これを数年置いて掘り上げ乾かしたものが生薬となる。ときに走出茎が混じる。これは甘味が弱く品質不良。中国東北地方の産出品を東北甘草と称し、日本でもてはやされる。あらゆる漢方方剤に配合され、いわば矯味薬(口当たりをよくする)とでもいう重要なもの。世界的にはアメリカが第一位の消費国で、次に日本、醤油、煙草など味付けに用いる。
薬用部分:種として根
採取時期:秋
用 法:急な痛みを一時的に緩和する作用があるので、常時備えておくのがよい。夜中突然激しい痛みを訴えたときに、2~3gを煎じて服用する。また、収斂性があるのでトゲ抜きや、咽喉炎、せき、痰、声のかれなどに、適量の煎液でうがいをすると、のどの痛みがやわらぐ。
(橋本竹二郎著『目で見る薬草百科』)
甘草は 喉の痛みを 和らげて 友のくすりを 導引(みちびく)ぞかし
甘草は 上皮をよく 削(けず)り捨(すて) 生(しやう)か焙(あぶ)るか 方によるべし
(橋本竹二郎訳『新編和歌能毒』)
甘草
[性味] 甘・平
[帰経] 十二経
[効能と応用]
① 補中益気 四君子湯、参苓白朮散
② 潤肺・袪痰止咳 桑菊飲
③ 緩急止痛
④ 清熱解毒
⑤ 調和薬性
脾胃の正薬であり、薬性を調和し百毒を解す。
[
参考] 生用すると涼性で清熱解毒に、蜜炙すると温性で補注益気に働き、清瀉薬には生で、補益薬には炙して使用する。
(神戸中医学研究会編著『中薬学』)
甘草
性味:甘・平
帰経:心・脾・肺・胃
働き:①補脾益気:脾胃虚弱の疲れ、息切れ、食欲不振、下痢
②潤肺止咳:肺気虚の咳・喘息
③緩急止痛:脘腹部疼痛、四肢の筋肉・関節の疼痛
④清熱解毒(生):瘡瘍腫毒・咽喉腫痛
⑤緩和薬性(生):薬効の強い薬と一緒に使う
応用例
① 疲れ、無気力:炙甘草+吉林人参・黄耆・白朮・茯苓
② 疼痛:炙甘草+白芍
③ 咽喉の痛み:炙甘草+桔梗
④ 皮膚化膿症:生甘草+金銀花・連翹
注意:
ホルモンに似た作用があり、長期服用するとむくみを起こしやすい
(辰巳洋著『薬膳』)
甘草(補有り、瀉有り、表を能くし裏を能くす。升可、降可)
①
(汪昴著・寺師睦宗訓『本草備要』)
カンゾウ 甘草 胃痛・胃痙攣・咽喉痛
甘草は中国から小アジアのかけて分布するマメ科の多年草sw、ウラルカンゾウ・シナカンゾウ・スペインカンゾウなどの種類があります。
自生していませんが奈良時代に中国から唐の文化と共に渡来しらたしく、刺激緩和・解毒の要薬として、正倉院に保存されている。カンゾウは名の如く“アマキ”“アマクサ”とも、また“国老”“主人”とも呼ばれます。前者は甘さ(ショ糖の50倍)から、後者は国には国老(帝王の師)、家には主人があって治まるとの意味からきています。
『名医別録』に「甘草は百薬の毒を消し、七十二種の石、1千2百種の草と和す」と記され、漢方薬処方にはほとんど配合されている。
甘草は一味でも使用し、『傷寒論』に熱がなく、寒気が激しく風邪を引いて咽喉が痛むのに甘草湯を飲めば治る。
また、咽喉が痛くないのに、声がかすれたり、声が出ないときにも効きます。
その他、皮膚や粘膜に切り傷や外傷がある炎症が激しく、我慢ができないような痛みの時に、外用あるいは内服すると、数分間で血は止まり、痛みも同時に止まります。
甘味の主成分グリチルリチンは砂糖の150倍もの甘味があり、副腎皮質ホルモン様の作用のほか、抗炎症・抗アレルギー・解毒作用・肝障害回復作用などの薬効が報告されています。
カンゾウの甘味は醤油・菓子類の甘味料に、またタバコ製造に使用されています。
薬効・使用法:
急迫症状の胃痙攣・胃痛・神経痛には甘草8gを煎じて温服する。食中毒に甘草10gに黒豆10gを煎じて服用。胃潰瘍には甘草俟つgを3回に分服。
咽喉痛・咽炎には甘草の煎じ汁でうがい。
(青田啓太郎『草根木皮』)
甘草(かんぞう)
甘草や昨日の花の枯れ添へる(たかし)
山梨県の塩山市に甘草屋敷がある。教育委員会が掲げた由来書によると、この地の高野某が江戸時代に幕府の保護を受けて甘草を栽培した遺跡という。切妻造りの構えは享保(1716~36)の建造といい、県の重要文化財に指定されていた。
甘草は有名な生薬だが日本には自生していない。奈良時代に唐の文化とともに渡来し、正倉院の宝庫にも保存されている。室町時代には甲州、薩州、信州などで栽培を試みたらしいが、いまだに本格栽培は成功していない。甘草屋敷の説明も家屋だけで、甘草そのものの講釈は何もなかった。
栽培もしていないのに、甘草という薬種は江戸っ子の間でかなり知られていたらしい。「いろは救民救薬の歌」に、
腰痛み筋がつるなら橙の皮に甘草を入れ煎じ飲め
とある。薬種屋で甘草を売っていたのであろう。江戸も中期以降にはいろんな書物にも甘草が出てきた。これほど知られたものなら川柳にも詠まれているだろうと、丹念に調べてみたが見当たらない。察するに江戸っ子は、
酒断ちを諭して飲ます甘い草(昶)
といった雰囲気で飲まれたのではないだろうか。とすると、川柳にはなりにくい。
余談はともかく、カンゾウはマメ科の植物で中国、ロシア、スペイン産がある。『薬局方』にも収載されており、薬用には根と根茎を使う。生薬名も「甘草」と書く。甘味が強いほど良品とされ、実際になめてみるとかなり甘い。そのはずで蔗糖の50倍は甘いという。一般に漢方では単味の生薬を使わないが、甘草だけは例外で、のどが痛いときや声がかすれたときなどに甘草湯を用いる。
漢方では甘草の尊称を「国老」とも呼ぶ。国老とは帝王の師のことで、甘草の重要さを示す呼び名であろう。事実、『傷寒論』に収載されている113処方のうち70処方、つまり60%近くに甘草が配合されているのだ。『名医別録』にも「甘草は百薬の毒を消し、72種の石、1200の草と和す」とあり、その効能は解毒、鎮咳、去痰から緊張による疼痛、胃痛、十二指腸潰瘍、食中毒にまで及ぶ。
甘草の主成分はグリチルリチンという物質で、これが甘味の元でもある。そのほかフラバノン配合体やブドウ糖、マンニット、アスパラギンなどを含有し、未知の成分もあるらしい。生薬学者は甘草をスリリングな研究テーマに数えている。これまで発表された例をみても、副腎皮質ホルモン様の作用が認められたとか、抗アレルギー、肝機能改善、抗炎症作用など、数えきれない。最近ではエイズウイルスにも抑制力が――と話題になったが、これはまだ立証されていない。
甘草の入っている処方で最も有名なのは小柴胡湯であろう。この薬には柴胡、半夏、黄芩、人参、大棗、生姜、甘草の七味が配合されている。小柴胡湯は漢方薬の中でも一番多く用いられるものだ。急性の病気ではカゼや気管支炎などに、慢性の病気では気管支喘息や慢性肝炎、慢性胃炎などに、そして体質改善の意味でも使われる。小柴胡湯での甘草の役割は諸薬の調和であり、甘草湯や芍薬甘草湯では鎮痛の目的を果たす。
最近、甘草の入っている漢方薬に副作用が報告された。甘草湯、桔梗湯、芍薬甘草湯などで、浮腫や高血圧症をおこしやすいというのである。一般にこれらの処方は長期間のむことは少ないが、顔や手にむくみが出たら薬を中止して医師や薬剤師に相談すべきだろう。とにかく甘草は市販約にもよく使われるし、醤油の味つけからタバコや菓子の甘味料としての需要まで広く、最も輸入量の多い生薬である。
これほど知られた生薬なにに、甘草が川柳にもでてこないのはどうしてだろうか。
甘くては頼りなさそう煎じ薬(修子)
これは昭和ひと桁生まれの句。江戸から大正にかけての常識でいえば、良薬は口に苦かった。甘い薬は江戸っ子の気質に逆らうのかもしれない。ガキじゃあるめぇし甘ったるい薬なんてのめるけぇ、という啖呵の一つも聞こえてきそうである。
甘草に漢種あり和種ありロシア種あり就中(なかんずく)スペイン甘草最も甘し(耐)
(鈴木昶著『薬草歳時記』)
甘草(ガンツアオ)
ある村に年老いた医者がいました。
ある時、よその村へ往診にでかけて、何日も家をあけました。その留守中、村では病人が次つぎにでたため、みんなは、医者の帰りを首を長くして待っていました。留守をあずかった医者の連れ合いであるおばあさんも、気が気ではありません。
「おじいさんは、病気の人にはいつも薬草をあげていたんだが…」
お勝手には、かまどで燃やす干し草がつんであります。その一本をとってかんでみると、甘味がありました。
(そうだ、これを薬の代わりにあげよう。煎じて飲んだところで害にはなるまい。気休めに飲めば、病気も快方に向かうというもの)
おばあさんは、干し草をきざみ、紙に包んで、病気にかかった人たちに渡して言いました。
「これは、先生がお立ちのときに、置いていったお薬で、どんな病気にもいいそうです。これを煎じて飲みなされ」
こうして、何人もの病人が干し草を煎じて飲んだところ、思いがけずよくなりました。
数日後、医者は村にもどりました。病気が治った人たちは、さっそく薬代をもってやってきました。医者は、もう、狐につままれたようです。
「薬代だって? はて、わしは薬など出してはおらんが」
「先生が奥さまにお渡しになったお薬でがす。奥さまが下さいましたんで」
医者は、首をかしげています。
「お前さんに病気が治せるとでもいうのかね?いったい何をあげたのだ?」
おばあさんは、薬代を受け取っておくようにと目くばせして、病人が帰るのを待ち、一部始終を話しました。医者は、目を丸くして驚いて言いました。
「たとえ、その干し草が病気を治せるにしても、みんなが同じ病気を患ったわけではなし。不思議なこともあるもんだ」
よく日、医者は、干し草を煎じて飲んだ人たちに来てもらい、具合を聞きました。その中には、胃腸の悪かった人、咳(せき)が出て痰の切れなかった人、喉が痛んだ人、できもののできた人、それから胎毒(たいどく)(乳幼児の、母胎内で受けた毒といわれているが、実際には、多くは感染性の疾患によるもの)の子供もいました。医者は一人ひとり診察しましたが、どの患者もすっかり治っているではありませんか。
それからというもの、この医者は、その干し草を使っていろいろな病気を治しましたが、この草が、気を補い、胃をととのえ、のぼせを除いて毒をくだすはか、他の薬といっしょに煎じると、ほかの薬草の効めをいっそう引き出す作用のあることを知ったのでした。
その後、その「干し草」は「甘味」があるので、甘草(ガンツアオ)と呼ばれるようになりました。
(繆文渭著『中国の民話』)
参考文献
(橋本竹二郎著『主治医』)
(橋本竹二郎著『目で見る薬草百科』)
(神戸中医学研究会編著『中医臨床のための中薬学』)
(辰巳洋著『薬膳』)
(汪昴著・寺師睦宗訓『本草備要』)
(青田啓太郎著『草根木皮』)
(鈴木昶著『薬草歳時記』
(繆文渭著『中国の民話』)
写真はこちら薬草写真集 【か】かんぞう・甘草 無料画像です いいね!お願いします。
カンゾウ(マメ科)・甘草・甜草のノート
投稿日: