6月7日の唐招提寺にて撮影
【蓮について】
蓮のねはあぢいひああまくひえのもの ねつしてのどのかわくにそよき
(蓮の根は味わい甘く冷えのもの、熱して咽喉の渇きによい)
はすのねは五さうおきなひむしによし おほくしよくしてきをふさくもの
(蓮の根は五臓を補い虫によし、多く食すれば気を塞ぐもの)
はすのねはらうさひによしたんによし すハぶきのある人はいむべし
(蓮の根は癆瘵によし痰によい、水分気のある人は慎むべし)
はすのねハはなちたりつつ上きして ちをはきくちのねばるにそよき
(蓮の根は鼻血たれつつ上気して 血を吐き口が粘るによい)
(『和歌食物本草』)
ハスは古い時代、恐らく仏教伝来のころに将来されたものといわれます。また慈覚大師が中国より導入したと伝えられる「天竺蓮」は元禄年間、そして根茎を食用にする「食用ハス」は明治八年導入と記録されています。分布は、オーストラリア北部からインドネシア、パキスタン、カスピ海南岸、トルキスタン、中国東北部 (旧満州)北緯四三度付近から日本の北海道に至る広範囲に及ぶという。日本列島にもかつて自然分布したが、何らかの理由で滅び、その後数次にわたり中国から導入し現在に至るという。太古の日本列島に分布していた大賀蓮が、明治期に導入した食用蓮と同様、根茎を食用に供していたとしたら、眼の前に描くハスも、案外それだったかも知れないなどと考えながらの素描でした。ハスは、根茎・葉・花托・実を薬用にする、栽培容易な落葉性の大型多年生草本です。 (橋本竹二郎著『主治医』403号)
蓮(リエン)・藕(オウ)ハス
◆性味-甘・渋、平、無毒
蓮(ハス)はスイレン科の植物である。各部位の名称は異なるが、すべて薬用になる。蓮の柄は荷梗(カコウ)と言う。葉は荷葉(カヨウ)と言い、花と葉柄とが連なるところは荷帯(カテイ)と言う。花蕊は蓮鬚(レンス)と言う。成熟した花托は蓮蓬(レンホウ)あるいは蓮房と言う。種子は蓮肉(レンニク)あるいは蓮子と言う。中の胚芽は蓮心という。蓮の地下茎は藕(薬用には藕節:グウセツ)と言う。みな薬用になる。
◆効用
蓮子は滋養食品であり、鎮静、精神安定の効果がある。胚芽は血圧効果および強心作用がある。蓮鬚は収斂、鎮静薬になる。藕節は伝統的な止血薬である。蓮蓬、荷葉、荷梗は止血、下痢止めの効果がある。
◆応用
① 吐血、下血、鼻血、婦人の崩漏
藕節5~6個を刃物で打ち砕き、黒砂糖を加えて、煎じて服用する。あるいは蓮蓬3~4個を煎じて服用してもよい。
② 長期の下痢、腸胃の風熱による出血
荷梗あるいは荷葉帯30~60gを水で煎じ、柔らかい飴(すなわち麦芽糖)1~2匙を調合して服用する。
③ 脾虚による希薄な大便、睡眠不足、心臓動悸、婦人の腰がだるく帯下が多い、体質虚弱者
蓮子(芯を除く)、芡実(殻を除く)各60g、新しい荷葉(掌の大きさ)1枚を適量の粳米(モチゴメ)で煮て粥をつくる。砂糖適量を加えて服用するとよい。
④ 高血圧、頭脹、心臓動悸、不眠
蓮心1.5gを湯に入れ、お茶の代わりに飲む。
⑤ 血友病、鼻血、歯血、喀血
新鮮な藕1000g、新しい梨500g、生のミズクワイ500g、生の甘蔗(サトウキビ)500g、新鮮な生地黄250gを一緒にしてしぼって汁を得、毎回1小半、1日3~4回服用する。
⑥ 夢精、遺精
荷菜30gを細かにすりつぶし、毎回3g、毎日朝晩各1回おもゆで服用する。軽いのは1、2服、重いのは3服で治る。
(葉 橘泉著『医食同源の処方箋』)
蓮の根
:甘・平:脾胃の働きを助け、気力を充実させ、のどの渇きを止める。血の迷走を止める。
生のまますりおろした汁+生姜のおろし汁+黒砂糖(お湯を注ぐ):咳止め・痰切りの作用がある。