タミフルの無効と害が証明される 浜六郎
効果は見かけだけ、害は確実
「これまでの常識を覆すことになる結果」というのは、タミフルやリレンザの効果についても、また、害についてもい
えます。まず効果は、インフルエンザの治療においても予防においても、見かけ上だけであり、意味のある効果はなかったからです。
治療に用いた場合の効果は、症状改善までの時間がわずか1割程度早まるだけで、インフルエンザによる脳症や肺炎な
どの合併症や、そのための入院は減らすことができませんでした。予防については、適切な方法による予防効果は証明さ
れませんでした。見かけ上減ったのは、薬剤の影響でウイルス感染が検査で検出されにくくなった結果です。
その一方、害については、精神神経系の害が明確に認められ、免疫の抑制が明瞭で、糖尿病や、腎障害、心臓に対する
悪影響もあることがわかりました。日本で公表されている申請資料概要だけでは不明であったのに、治験総括報告書の詳
細が検討できたために判明したことも少なくありません。
【ノイラミニダーゼ阻害剤 ザナミビル(商品名:リレンザ)、オセルタミビル(商品名:タミフル)が効かない!?】
臨床医と医療関係行政当局者は、インフルエンザに罹患した人へのノイラミニダーゼ阻害剤を勧める現在の勧告を直ちに改定すべきである。われわれの結果は、オセルタミビルとザナミビルの両剤が、インフルエンザ様疾患の成人の症状緩和までの時間を短縮することを確認した(喘息小児への同様の効果はない)。この効果は小さく、約半日の短縮である。これが一般的に使用されている解熱剤による治療よりも優れているかどうかは不明である。
しかしながら、オセルタミビルとザナミビルのいずれかが、特に肺炎のようなインフルエンザ合併症および入院や死亡のリスクを低減することを示す信頼できるエビデンスは得られなかった。また、喘息小児や高齢者のように合併症のリスクが高い患者であっても、合併症のリスクを減少させる有益な効果を示すエビデンスは見つからなかった。
これらの結果に基づくと、毎年のインフルエンザおよびパンデミックインフルエンザ両方の発生において重篤なアウトカムを防ぐために、患者や臨床医、行政当局者がこれらの薬剤を使用することを支持するエビデンスは存在しないようである。
臨床使用における推奨事項と薬剤添付文書の表示は、これらの結果を反映させるように変更する必要がある。個人または家族でインフルエンザの発生を防止する予防薬剤として使用する場合、われわれの結果は、改めて予防への効果はわずかしかないことを示唆している。
これに基づくと、例えばインフルエンザの流行に際して、予防薬剤としてこれら薬剤を使用することに裏づけはあまりない。
現在オセルタミビルが重病患者や高リスクの患者の治療における必須薬として推奨されていることを考えると(2013a ; WHO 2013b)、これは懸念すべき問題である。
より抜粋
イギリスBBCの報道
http://www.bbc.com/news/health-26954482
日本語訳
「必須医薬品」タミフルにインフルエンザ対策として効果がないとの非難-専門家が製造元に対する訴訟を要求
2012年11月13日【Daily Mail】http://www.dailymail.co.uk/health/article-2232118/Essential-medicine-Tamiflu-accused-useless-fighting-flu-experts-legal-action-Roche.html
英国一流の医学雑誌が製薬企業ロシュ社 (Roche) に対し、タミフルに関する全データを公開するよう求めている。問題のタミフルがインフルエンザ・ウィルスに有効である証拠が実際のところはない、というのだ。世界的なインフルエンザの大流行に備え、世界中の政府はこのタミフルを大量に備蓄しており、2009年の豚インフルエンザのパンデミックの際には広く用いられた。
BMJ journalとつながりのある研究者がヨーロッパの各国政府に対しロシュ社を告訴するよう求めた。「ロシュ社がタミフルに関する非公開のデータを公開するまでは、我々はロシュ社の製品の不買運動を行うべきです」と、コペンハーゲンにあるノルディック・コクラン・センターの指導者Peter Gotzsche氏は記している。タミフルの備蓄のために「不必要に」費やした金額を取り戻すために、各国政府はロシュ社に対し法的措置を取るべきである、と彼はいう。
2009年、BMJジャーナルおよびノルディック・コクラン・センターの研究員らはロシュ社に対し、タミフルに関する全データを提示するよう求めた。当時コクラン・センターは、イギリス政府からインフルエンザ治療薬の審査を行うよう委託されていたが、同センターは、タミフルが合併症を起こしたインフルエンザ患者の数を低減させたという証拠を見つけることができなかった。
BMJ編集者Fiona Godlee氏は昨月の社説の中にこう書き留めている。「 (タミフル関連の) 裁判が行われる度に、 (社内の報告書を) 公開すると公約しているにもかかわらず・・・ロシュ社は協力していません」タミフルはアメリカ国内で約8万人に対し使用されていた。そのタミフルを含む製薬19商品が、死亡すら引き起こしかねない副作用を有していることを適切に報告していなかったとし、ロシュ社はまた、欧州医薬品庁からも取り調べを受けている。
インフルエンザの出現頻度はタミフル群とプラセボ群で差が無かったが、インフルエンザ感染が確認された割合は優位にタミフル群が少なかった。これをもって、タミフルはインフルエンザに予防に有効であったとされている。
2009年イギリスBMJ(医師会雑誌)
http://www.bmj.com/content/339/bmj.b5106
Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults: systematic review and meta-analysis
コクラン共同計画のチームが、タミフルなど、抗インフルエンザウイルス剤を用いても合併症としての肺炎などを防止する効果は認められなかった、再検討結果をまとめて、英国医師会雑誌(BMJ)に発表しました。
結論↓
ノイラミニダーゼ阻害剤は、ふだん健康な成人にはインフルエンザの症状を軽減する効果が少しある。インフルエンザ感染の機会があってから服用した場合には、検査で確認できるインフルエンザの予防には効果があるが、これはインフルエンザ患者のわずかでしかないので、この目的には有効ではない。季節性のインフルエンザに対する症状の軽減のためには、ノイラミニダーゼは選択肢になりうるかもしれない。しかしながら、オセルタミビルによる合併症の防止という点に関する従来の知見は、良質のデータを欠くため、土台から崩れてしまった。これら不明の点を解決するためには、独立したランダム化比較試験が必要である。
インフルエンザについて
【浜六郎氏の記事より】
インフルエンザが流行する季節がやってきた。
インフルエンザはA型、B型、C型、3種類のウイルスで起きる急性の感染症である。かぜと混同されやすいが、かぜとは違う。症状は発熱・鼻水・せきなどで同じだが、激しい型の流行時は、熱が39度以上になる▽頭痛や関節痛が強い▽感染力がきわめて強い。ふだん健康な人はまず問題ないが、高齢者や弱っている人、若くても解熱剤を多用し休まず無理したりすると、重症化しやすい。
大流行を起こすのはA型だ。変化しやすいウイルスで、過去にない型に大きく変異すると世界的流行となる。その時には、人口の10~30%がかかる。ただし、A型は症状が激しいが治りも早い。せき以外は2~7日で治まる。C型は流行もしない軽いものだが、長引きやすい。B型は流行しない年とする年があり、症状もAとCの中間だ。いずれのウイルスも、潜伏期は1~3日ほどだ。俗に「他人にうつすと治る」といわれるのは、症状がおさまったころ、感染した人が発症するからだ。
インフルエンザウイルスは、冷たさと乾燥が大好きで高温が苦手。閉鎖した寒い空間で、くしゃみやせきにより空気感染する。だから、流行時は寒い所に長居はよくない。電車や教室でマスクをすることは、クシャミでウイルスをばらまかないためにも、空中のウイルスが鼻や口から入らないためにも役立つ。のども温まる。くず湯などでのどや体を温めるものもよい。
最近、抗ウイルス剤が登場した。かかり始めに使えば、治るのに普通5~6日かかるのが、1日ほど短くなる。だが、受診するのは半日仕事。私なら家で温かくして休養をとる方が得策と思う。抗ウイルス剤のうち、あるものは条件付きでA型の予防にも使用が認められている。しかし、数日も使うと耐性ウイルスができやすいし、流行が小さい場合には、予防できるのは20~30人に1人にすぎない。
予防・治療ともに大切なのは、寒さと過労を避け、バランスのとれた栄養と十分な睡眠をとることだ。受験生諸君も勉強は大切だが、無理は禁物。
解熱剤にはたよらず、頭痛がひどくて眠れない場合にだけアセトアミノフェンを少量使う程度に。抗生物質も不要である。
薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載) 医薬ビジランスセンター浜 六郎
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