甲状腺機能低下症の方の妊娠・出産

東京都立川市にて不妊相談をした方のお話です。29歳 甲状腺機能低下のためにチラージンを服用しているが、チラージンの断薬をしたい。そして赤ちゃんが欲しいというご相談でした。TSHが高いために不妊治療が出来ない、流産経験があるというご相談は多いですね。

甲状腺機能低下症について

甲状腺機能低下症が不妊の原因になるのは何故でしょうか。
以下の基準値表を御覧ください。TSH数値の上昇が認められる場合、「橋本病」・「甲状腺手術後」・「アイソトープ治療後」などの甲状腺機能低下症に関わる症状を発症している可能性が考えられます。

【TSH検査値の基準値】
範囲 単位(ng/ml)
上昇が認められる範囲 4.95以上
基準値の範囲 0.44~4.95
低下が認められる範囲 0.44以下

TSHは甲状腺ホルモンの分泌を促す働きを持つ甲状腺刺激ホルモンです。甲状腺はちょうど喉仏のすぐ下に位置します。主に甲状腺ホルモンの分泌をしているのですが、甲状腺のホルモン分泌の命令をするために脳から分泌されるのがTSH(甲状腺刺激ホルモン)というホルモンです。TSHが上昇しているということは、甲状腺を刺激しても甲状腺からホルモンを分泌出来ていない状態。

例えば、会社の上司と部下の関係で説明しましょう。
上司から指示(ホルモン)がメール(血液)で来ます。部下がそれをスマートフォン(受容体)で受信してそれを読んで初めて指示が部下に伝わるのです。この時、スマートフォンの受信状態が悪いと、どれだけ上司からメールが来ても部下には伝わりません。伝わらないからどんどんメールで指示(ホルモン)が来てしまう。必ず標的となる受容体が存在するのです。この受容体の感受性が低下するとホルモン(指示)が出ていても反応が低下してしまうのです。

甲状腺ホルモンの働き

甲状腺とは、体の新陳代謝を盛んにするホルモンを作る臓器です。甲状腺ホルモンにはT4,T3と二種類あり、食物として摂取されたタンパク質、脂質、炭水化物は、代謝されて体の組織を作るために利用されたり、エネルギーになったりしますが、いわゆるこの代謝を促す作用があります。胎児の発育に重要な働きをしたり、子どもの成長を促したりします。妊婦さんのTSHが高い時、赤ちゃんの成長に影響があるために不妊治療中から治療されることがあります。

甲状腺ホルモンには、ヨウ素(ヨード)の元素を4つ持っているサイロキシン(T4)と、3つ持っているトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。甲状腺ではおもにT4を作っていて、このT4が肝臓などにいってT3になり、これがホルモンの働きを発揮します。

つまり甲状腺機能低下症とは甲状腺から分泌されるホルモンが低下することによって代謝が低下する状態なのです。

そして胎児の成長のためには甲状腺ホルモン(T4)が必要であり、分泌が不足(TSHが高い)すると特に胎児の脳の成長に影響が出るのです。

妊婦さんのTSH基準が低いわけ

妊娠検査薬にて反応がでるのはHCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)というホルモンです。このホルモンは妊娠が成立した際に急速に体内で分泌量が増加する性ホルモンなのですが、HCGは甲状腺刺激ホルモンと非常によく似ていて甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促すのです。つまりTSHが妊娠前と同じだけ出ていなくても少し低いほうがちょうどよいのです。実際ほとんどの妊婦さんが検査するわけではありませんが、妊娠前にTSHが高いや、チラージンを飲んでいた方は検査することがあります。

妊婦さんのTSH基準

妊娠前期(13週まで): 0.1~2.5μU/ml
妊娠中期(14週~27週): 0.2~3.0μU/ml
妊娠後期(28週~41週): 0.3~3.0μU/ml
※米国甲状腺学会ガイドライン2011に準じて

甲状腺機能低下の治療のためのチラージン

五年ほど前にチラージンが足りないために、全国から補給をしたことがありました。チラージンとは甲状腺機能低下症に使用される薬ですが、甲状腺ホルモン(T4)の働きをします。TSHが高いということはT4の分泌が少ない、または無いということになるので全身の代謝に影響してしまいます。チラージンによって補給をする目的で使用されるのです。

それでは、チラージン服用していた方の妊娠、出産の経緯を紹介いたしますね。

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